家族にしか出来ない介護とは

もう随分前の話になりますが、元東京都知事の舛添要一さんが九州に住む親の介護について発信されていた事があって、彼曰く「介護は専門職へ、家族は愛情を」といった内容でした。

勿論それはそれで正論ですし間違っていないのですが、私は現在この意見については少し別の考え方を持っています。

ちょっと個人的な話しになりますが、私は田舎の大家族の中で育ち結構大きくなるまでひい婆ちゃん、つまり曾祖母が生きていました。

最晩年の曾祖母は今から思えば多分認知症が進んでいた状態で、ほぼ寝たきりの状態でした。その影響もあってか、大変に口汚く介護者を罵る事があったようで、深夜に母が声を殺して泣いている姿を何度も見たことがあります。当時私は小学生で母親の泣く姿は子供心をとても傷つけましたが、昔は年寄りを預ける施設も充実しておらず、介護は家族の仕事でした。

そんな経験がありますので、介護は専門職へという舛添さんの意見に納得する部分はあるのですが、それでもやはり出来る限りは家族の愛情で介護することが、結局介護される側もする側も幸せになれるというのが私の意見です。

もちろん認知症の場合など難しいケースがあることも承知しています。

離れて暮らしているなど物理的に無理な場合もあるでしょう。しかしもし介護の為の同居が可能であるならば、出来うる限り家族の愛情を持って介護してほしいと思います。

私の経験を少しお話しします。

以前働いていた施設での話しです。

その施設はサービス付き高齢者住宅と言われる施設で、実態は介護施設なのですが建前は高齢者に適した賃貸住宅という事になっています。

空き部屋さへあれば気軽に入居出来ますので、ちょっと独り暮らしや老老介護状態に自信が無くなって来た方が利用されます。

入居されると、その人の子供達にとっての実家がその施設になりますので、家族の仲が良い場合はかなり頻繁に娘さんなり息子さんなりが顔を出されます。

しかし家族仲が悪ければ当然誰もやって来ませんし、家族仲が良くても遠くに住んでいるなど物理的に訪問が難しい方の場合は結果的に誰も来ません。

さて、ここからは私の主観ですのでエビデンスがあるわけでも何でもないのですが、頻繁にご家族が来られる入居者の方は結果的に元気で要介護度も上がっていかない方が多い印象でした。

一方で誰も来ずにほったらかし状態の方はどんどん要介護度が上がっていく印象です。

介護に関しても「サ高住」の場合、建前は賃貸住宅なのでご家族が常に出入りしている方はご家族が介護士と意見交換などしながら出来る事はされます。ほったらかしの方に関しては当然施設の介護士が全てすることになります。

この施設で私は6年程働かせていただいたのですが、その間に家族が頻繁に訪れる入居者の方は一人も亡くなりませんでした。一方で施設の介護士だけがお世話することになった方は数人が亡くなりました。

もちろん偶然だと思いますが…。

エビデンスが無いと言われてしまえばそれまでですが、人生の最晩年を迎えた人にとって精神的な拠り所はやはり思い出や体験を共有した家族以外にありません。その事は間違いないですし、頼る身内が手の届く場所にいてくれる事が何よりの介護になっているのだと思わずにはいられません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です