老化と味覚

人間歳を重ねると色々な感覚が衰えていきますが、味覚も当然衰えていきます。

これは何もお年寄りに限ったことでは無くて、20代や30代の若い人でも子供の頃の味覚に比べると味の感度が鈍くなっていると自覚している人も多いのでは無いでしょうか。

ちょっと古いデータになりますが、2012年に日本大学医学部の医師が発表した資料によると、味覚障害で病院を受診する年齢層のピークは60歳代と記されていました。

その30年前の調査では50歳代がピークと記されていますので、現在では味覚障害で受診する方のピーク年齢は更に上がっているかもしれませんが、いずれにしても老化と味覚の衰えはセットで考える必要があるという事になります。

ちなみに前記の資料によると、人間が味を感じる味蕾の数は0〜20歳では平均245個なのに対し74歳以上では88個と、約35%まで減少すると書かれています。

これがもし単純に味の感度に置き換えられるとしたら74歳以上のお年寄りは20歳の若者の1/3程度しか味を感じられないという事になります。

実際はそう単純な話しでも無いようですし個人差もある話しになりますが、塩味に関しては一般にかなり感じにくくなると言われています。

家庭でお年寄りに食事を提供する時に、よく気がつく優しい人ほど塩分などに気を遣って薄味で仕上げるといった話しを聞くことがありますが、何も薄味に仕上げなくてもお年寄りにとっては最初から薄味に感じているのかもしれません。

もしご自分のお世話している方が塩味を感じにくくなっているなと感じたら、出汁を濃いめにしたりスパイスを効かせてみたり工夫が必要になってきます。味が複雑で旨味が多ければ塩分を控えめにしても美味しく食べられますので色々試してみて下さい。

ところでこれは私が知り合いから実際に聞いた話しですが、久しぶりに実家に帰って親の作る味噌汁を飲もうとしたら、汁にトロミが付くほど大量の味噌を入れてしまい、塩辛くてとても飲めなかったと言っていました。恐らくこの方は塩味を感じにくくなっていたのだと推察されますが、ここまで行くと治療を要するレベルだと思いますので家族や近親者は注意が必要です。

加齢による味覚の衰えだけでなく、沢山の薬を処方されているお年寄りは薬による味覚障害も考えなくてはいけません。

これは私が施設で調理していた時の話しですが、あるお年寄りがご飯が臭くて食べられないと訴えてこられました。一体このご飯はいつ炊いた物なんだと怒っていると介護士さんが言いに来られました。その時はだいたい50人ほどの食事を提供していましたが、他の方からは一切そうしたクレームはありませんでしたし、ご飯も当然その都度新しい物を炊いて提供していましたから炊きたてに近い状態でした。

それで介護士さんにちょっと説明に来て欲しいと言われ、私が説明に伺ったのですが、具体的にどんな匂いがしますかとお聞きしても要領を得ません。ただ臭くてとても食べられないとおっしゃいます。それでその方のご飯の匂いを実際に私も嗅いでみましたが全く普通でおかしな匂いなどしません。結局お互い要領を得ないままその日は食べずに残してしまわれたのですが、その後しばらく経ってからは以前の様に普通に食べるようになっていました。

このケース、私は恐らく薬の影響ではないかと思っています。と言うのも、このクレームを言ってこられた方は少し神経質な方で、何かにつけて施設の外のお医者さんに行きたがり、その都度色々な薬を処方されている方でした。薬を処方されると安心されるみたいでしばらくはおとなしくなり、薬がなくなった頃にまた騒ぎ始めて施設の外の医者に連れて行けと言い出すお年寄りでした。訴える症状もその都度違う症状を訴えられていた様でしたので、当然処方される薬も違う薬だったはずですし、しばらくしてから元通りにご飯を食べ始めた所からもその時に処方されていた薬のせいではないのかなと思っています。

今日は自宅でお年寄りの食事を作る際にはこうした事も頭に入れておく必要があるというお話しでした。

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