自分の親なり親族に介護が必要になった時、最初に決めなければならない事に「誰が介護をするのか」ということがあります。誰が主に面倒を見るのかでもいいのですが、この部分で家族間での意思の疎通が出来ていないと後々色々な揉め事の原因になります。
これは介護を受けるご本人の気持ちにも影響する事なので大切なポイントです。
私の父親の場合を例にあげますと、まず父は母が亡くなってからずっと独り暮らしをしておりました。私は三人姉弟の末っ子で次男でしたが、長男は遠方で暮らしており介護に関わる事は不可能でした。私と姉が関わるしかなかったのですが、私も姉も父の暮らす実家からは車で3時間以上離れた距離で生活していました。
家事など何も出来ない父でしたので、母が亡くなってからは姉が月に数回程度泊まりがけで帰省して掃除や他の雑務をしてくれていました。勿論その時は父も元気でしたからそれで問題ありませんでした。
ところが体調を崩して独り暮らしに不安が出てきた段階では、月に数回の姉の世話では無理になってきました。流れ的には姉が面倒を見る流れで来ていたのですが、色々すったもんだの末に結局私が単身で父と同居して面倒を見ることになりました。
そうして2年弱の月日が流れ、父が他界して介護生活は終わったのですが、このあいだ実に様々な問題に直面しました。
最初に直面したのは、私自身が介護保険のしくみや利用の仕方など何も知らなかった事です。介護保険を使うためには介護認定を受ける必要がある事さえ知りませんでした。
あわてて地元のケアマネさんを紹介して頂き介護認定を受ける手続に入りましたが、認定が降りるまでに必要なものが色々と出てきてしまい、その分については一旦見切り発車で用意したことを覚えています。
もし最終的に介護認定が不認可となれば全額実費となるわけですから出来れば避けたい事態でした。
次に問題になったのは、施設や介護サービスを利用するのかどうかという事です。
私は父の隣の部屋でネットを使って仕事をしていましたが、ずっと父が家にいる状態だと食事の準備も三食しなければならず、正直デイサービスを利用して欲しいと思っていました。しかし父は施設に入ることはもちろん、通所サービスを利用することも拒否しました。
もちろん掛かりつけの医者に連れて行く事も必要でしたし、少し遠方にある総合病院へ月に数回検査などに出向く必要もありました。
つまり私自身、仕事どころではなくなってしまったんです。
そうは言っても仕事もある程度しておかないことには離れて暮らす自分の家族に生活費を渡すことも出来ません。私はサラリーマンではありませんでしたから、やった分だけが収入でしたので、これも切実な問題となりました。
この段階で、もし私と姉と父の間で事前の取り決めが何も無かったらどうなるでしょうか。
恐らく私は家族を養えないからと言う理由で介護を辞めざるを得ない状況になっていたろうと思います。そうして父の意向を無視する形で預かってくれる施設を探していたと思います。
実際は、介護をすれば仕事が満足に出来なくなることは目に見えていましたので、不足する生活費などは父の年金や貯金を使って良いという約束が出来ていましたが、この約束が出来ていなければ父の介護は諦めざるを得なかったことになります。
こうした事も含め、親の死を前提にした話し合いは中々しづらいものです。特に親が元気なときにお金がからむ話しをする事はとてもハードルが高いものですが、ここでしっかり話し合っておくのとほったらかしにするのとでは親が亡くなってから天と地ほどの差が生まれます。私の場合も、事前の話し合いの詰めが甘かったので結局かなりもめ事を抱えることになりました。
この世に生まれてきた以上、親という存在から逃げることは難しいですし親との関係性に問題がないなら介護の問題から目をそらすことも出来ません。
親が元気な内にしっかりと、いずれ訪れるその時に備えるのも立派な親孝行だと思います。