介護食に向く調理法 その2

前回、介護食を作るのに向いている調理方法は「煮る」と「蒸す」だとお伝えしました。

「煮る」については説明の必要もないと思いますので、今回は「蒸す」について、すこし詳しくお伝えしたいと思います。

最初に思いつくのは和食や中華で一般的な蒸し器で蒸す方法ではないでしょうか。

この場合、材料をあらかじめ器に盛り付た状態で蒸し器に入れ、蒸し上がったらそのまま食卓へ出すパターンが多くなります。蒸籠(せいろ)を使って蒸す場合も同じですね。

この方法の難点は、「蒸し器」や「蒸籠」という特別な調理器具が必要な事と、作りたい人数分の器が蒸し器に入りきらない場合などは何回かに分けて蒸す必要があり、その場合時間がかかります。和食で「蒸す」と言えば、ほとんどがこの方法になるかと思います。

良い点は、蒸し上がったら器ごとそのまま食卓に出せますので、仕上げの盛り付けをする必要がありません。また、同じ大きさの器で蒸せば火の通りが均一になりやすいのも良い点です。

一方、洋食の方に目を転じると全く別の景色が見えてきます。例えば、フランスでは野菜をたっぷりのお湯で茹でる事をあまりやりません。特に家庭料理でその傾向が強いらしく、アスパラガスを食べたいとした時に、日本ならお湯を沸かして茹でてしまいますが、フランスでは「蒸し煮」にする方が一般的です。

これはヨーロッパの水が硬水で野菜と相性が悪いからなのですが、そのせいで「蒸し煮」の方法が和食に比べても多様で発達しています。

例えば、主に野菜料理に使われる蒸し煮の方法に「エチュベ」というものがあります。

鍋に野菜を入れ、少量の水とオイルやバターを入れたら蓋をして火に掛けて蒸し煮にする料理です。オイルを足しますのでコクが出るのと、汁ごと食べる料理なので栄養のロスがありません。味つけは塩・胡椒のみのシンプルな蒸し煮料理です。

この方法を使ったレシピは「何々のエチュベ」というふうに書かれていると思います。

肉料理に多く使われる蒸し煮の方法には「ブレゼ」というのがあります。少ない液体(ソース)の中に肉や魚の塊を入れて、蓋付きの鍋ごとオーブンで蒸し焼きにするのが本来の方法なのですが、オーブンを使わずに手軽に鍋で調理する場合もブレゼと言ったりします。

例えば、玉ネギやキャベツやトマトなどの野菜を敷いた鍋の上に白身魚の切り身を載せて、ワインやビネガーやバターなど好みの調味料を入れ塩胡椒したら蓋をして蒸し煮にすれば、「白身魚のブレゼ」になります。

こんな風に、少量の水分を入れた鍋で食材を直接加熱して煮物と蒸し物の中間的な料理を作る方法は西洋料理に多く、介護食を考えた時にも是非覚えておきたいテクニックになります。しかも蒸し器を使って蒸すよりもずっと簡単で手軽ですし小さめの鍋を用意すれば少人数分でも失敗無く出来ます。

「やわらかくしっとり仕上がった喉越しの良い料理」を作るための方法として覚えておいて下さい。

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