介護と責任と保身のはざま

先日、確か北海道のバス会社がいわゆるカスハラについて毅然とした態度をとると表明して話題になっていました。

カスタマーハラスメントと呼ばれる事は、実は今に始まったことではないですし、昔からバカな要求を平気でしてくる人はいくらでもいました。

しかしそれが何故問題にならなかったかと言うと、社会全般にまともな「倫理感」が生きていたからです。

常識を逸脱した要求やクレームについては、しっかりと要求をはねつける厳しい対応をしてもそれを社会が許していましたし、会社やお店にとってマイナスイメージにはなりませんでした。

しかしネットが普及するとクレーマーと呼ばれる人達の声や行動が社会を変えてしまいました。

その事についてここでは深くは触れませんが、世知辛い世の中になった事は事実です。

これは介護の現場でも現れていて、例えばお年寄りが食事を喉に詰めて亡くなったとします。

すると当然、施設の責任を問われますし場合によっては遺族から高額な賠償金を請求されるでしょう。

これがもし30年前に同じ事が起こったとして、誰が賠償金を請求しようなどと考えるでしょうか。恐らくよほど悪質な何かが無い限りは、遺族は施設の謝罪を受け入れて話しを収めたでしょう。

こうした悪意のない取り返しの付かない事故については、事を荒げる様な下品な事はしないのが日本的な情緒だったのではと思います。

ひるがえって今はどうでしょうか。

介護の現場では、「利用者第一」と口では言いながら実際には責任をいかに回避するかにエネルギーを使っていないでしょうか。

食事について言えば、誤嚥を怖れてお茶にまでトロミをつけたり、喉に詰める恐れがあるからとパンの提供をやめてしまったり、あるいは同じ理由で常食を刻み食にしてしまったり。

勿論無謀なことはやめなければなりませんが、最大限リスクを回避するといった建前が保身や責任回避と結びつくと、そこにはお年寄りご本人の意思の入り込む隙間が無くなってしまいます。

何だか愚痴のような記事になってしまいましたが、自分も近い将来介護を受ける身になることを考えたらついつい書きたくなってしまいました。

今日はこの辺で。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です