介護食目線で考えた「食材」に関連した記事をいくつか書いていきたいと思います。
まず第一回目は「卵」。
その前に、公益社団法人全国職業訓練協会が定めた介護食の「定義」というのがありまして、ちょっとご紹介します。とても長くて難しいです。
「介護食とは、口から食物を摂り消化吸収し排泄する、という一連の動作に軽度の障害があるけれども、食事の作り方を工夫すれば口から食事を摂ることが出来るようになる人や体の機能低下や病気を持った人、が口から摂取出来る食事、しかも栄養バランスがよく、おいしさと食べやすさに配慮された食事、のことを言います。」
実はこの文章、介護食士の資格を取得する際に使う教科書の最初の方に出てくるのですが、
要約すると、「やわらかくしっとり仕上がった喉越しの良い料理」と考えればだいたい問題ありません。
ちなみに私個人的には、「やわらかい」「しっとりで喉越しが良い」のどちらか一方だけでも満たしていれば介護食として提供しても良いと考えています。
お年寄りの残存能力を維持する為にも、多少の食べにくさはあっても良いと思いますし、そうした「食べにくさ」を経験し自覚することでご本人の食べる意欲を維持する動機にもつながると考えるからです。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は介護食と卵の話しです。
卵という食材はメインのおかずにもなれば、色々なものに混ぜ込んで繋ぎとして使う事も出来る万能選手です。
栄養価も高く、ビタミンCと食物繊維以外の全ての栄養素が含まれる準完全栄養食品でもあります。高齢者にとってはタンパク質が豊富なのも魅力ですね。
そんな卵ですが、これを介護食の定義にあてはめて考えた時にひとつだけ避けて欲しい調理方法がありますのでご紹介します。
それは「固ゆでにする」です。
黄身までしっかり火が通った固ゆで卵は口の中で水分を吸収してしまいますので、唾液の分泌量が少ないお年寄りにとっては口の中で散らばってしまい飲み込むことが困難になります。
何とか飲み込もうとあわててお茶や味噌汁を口に含みむせ込んでしまうといった事になり、誤嚥性肺炎の原因ともなります。
同じ理由で、焼きすぎの目玉焼きも避けて下さい。
一方で、半熟に仕上げた卵は、他のおかずと一緒に食べることで口の中で食材のまとめ役となりお年寄りの嚥下を助けます。
特におすすめするのは「スクランブルエッグ」です。
ただし炒り卵の様に火を通しすぎない事が前提です。写真を貼っておきますので参考にして下さい。この写真くらいのトロトロ感がベストです。
こんな風にトロトロに仕上げたスクランブルエッグを、例えばハンバーグや魚フライなどと併せて提供して一緒に食べてもらいます。
するとスクランブルエッグがトロミ液の代わりになって口の中で食材をまとめるので誤嚥の可能性が低くなりますし、不味いトロミ液を使わなくてよいので食も進みます。
卵の味は他のおかずの味を邪魔しませんし、逆に美味しくいただけます。
他には長いものとろろに混ぜ込んで生地にする使い方などありますが、長くなりますのでそれはレシピ記事の方で別途紹介していきます。
今回は介護食で気をつけたい卵の使い方をご紹介しました。