調理師目線と栄養士目線

私はサービス付き高齢者住宅の厨房で調理師として働いた経験がありますが、老健や特養なども含め、こうした施設では必ず栄養士か管理栄養士が献立を考えます。

これが街場のレストランですと、献立はほとんどの場合調理師が考えます。

レストラン業界や給食業界で働いた事がない方はこれが一体どんな違いを生み出しているのかピンとこないと思います。そこで今日は調理師さんが考えるメニューと栄養士さんが考えるメニューの違いについてちょっと書いてみたいと思います。

これはご家庭で家族に食べさせる献立を考える際にも参考になると思います。

まず一番の違いは、栄養士は頭で考え調理師はイメージで考えるということです。

施設で働く栄養士さんは、そこで暮らす人達の栄養バランスに対して責任があります。

ですからどうしても一日のカロリーだったりタンパク質の量だったりが気になります。

老人の施設ですと、一日あたりのカロリーはだいたい2000kcal程度にまとめる必要がありますので、まずはそこら辺からの発想になる事は致し方ありません。

一方調理師は栄養士さんとは真逆のアプローチでメニューを考えます。

調理師というのは、商品としてお金の頂ける料理を作るのが仕事です。

ですので料理に対して、金銭的な「価値」を生み出す技術を繰り返し訓練されます。

例えば同じトンカツを作るにしても、それをどのお皿にどの様に盛り付ければ見栄えが良くなるのか、そういった発想も含めて考えていきます。

私が修行させていただいた洋食屋さんの例をあげます。

そのお店では、お昼のステーキランチが大人気メニューでした。

場所はビジネス街でしたので、提供価格もサラリーマンの財布の負担にならない程度の値段に設定する必要があります。ですので、ランチタイムのステーキランチは1000円でお釣りが来る値段に設定されていました。同じお肉のステーキはディナータイムにも提供するのですが、ディナーでは1500円ほどの値段を頂戴していました。ディナーでは肉の量を若干増やしてはいましたが、お客様にしてみれば見た目が同じお肉ですので、昼より50グラム増量してますといった所で何か損した気分にさせてしまうかもしれません。ですので、お皿や付け合わせを変えたり盛り方を工夫するなどして同じ料理に「付加価値」を付けていきます。こうした作業はいたって感覚的な作業になりますので理屈の世界ではありません。

しかし栄養士さんの場合、いくら綺麗なお皿に盛り付けたところでそれは同じ栄養価の同じ料理でしかありません。

最初から全く別の視点で料理を見ているわけです。

ご家庭で毎日の献立を考えるときに、皆さんはどっちの視点から考えるでしょうか。

お子様の食事を考える時とお年寄りの食事を考える時では当然違ってくるかと思うのですが、だからと言って大人用、子供用、老人用と別々の料理を作るわけにもいきません。

忙しい日々の中で大人も子供もお年寄りもみんな喜ぶメニューが一番ですが、そんなメニューがそうそう沢山あるわけではありません。

だったら、先に書きました栄養士目線と調理師目線が参考になります。

栄養士目線でメインの食材を決定し、調理師目線で野菜などの色目を意識した献立を考える。栄養士目線で全体の量を決めたら調理し目線で調理方法を決定する。

例えば栄養士目線でタンパク質とカルシウムをしっかり摂ろうと考える。

そうして調理師目線で鶏肉のクリームシチューと決定する。

といった具合です。

まあこんなこと、わざわざ書かなくてもみんな自然にやっている事ではありますが。