日本人の平均寿命と健康寿命の差を男女で平均するとだいたい10年くらいになります。
女性が約12年で男性が約8年なので平均して10年という事なのですが、つまり女性は男性よりも長生きしますが、介護を受けながら生きる時間も男性より約4年も長いという事になります。(平均寿命−健康寿命=要介護期間)
この数字から何を読み解くかは人それぞれですが、私には年老いたおじいちゃんが不慣れな家事をこなしながら寝たきりのおばあちゃんを介護する光景が目に浮かびます。
勿論、おじいちゃんが先に亡くなっている事の方が多いでしょうが、そうならなかった場合には、要介護になってもなかなか死なないおばあちゃんを、死ぬに死ねないおじいちゃんが必死に介護する事になりますし、実際にその状況に耐えられずにおばあちゃんを手に掛けた事件が過去に何度も報道されていました。
こうした報道がなされる度に、どうして施設に預けなかったのかといった意見が出ますし、実際に施設に預けておけば、おじいちゃんが犯罪者になることもなかったわけです。
でもこれは難しい問題ですよね。
私の様に離婚してしまうような夫婦ならさっさと施設に入れられたでしょうが、仲の良い夫婦は最後の最後まで愛する妻を世話してやりたいと思うでしょうし、必死に介護するからこそ、苦しむおばあちゃんを楽にさせてやりたいと思い詰めたあげくに手に掛けるような事になるわけです。
ただ、一つだけ言える事は、介護を精一杯させてもらった経験というのは、残った人生の宝物になるという事です。
老老介護で辛い思いをしたあげくに、残った自分の寿命も長くないのに残りの人生の宝物なんかいるものかと思うかもしれませんが、ご本人にしてみればそんな事はないと思います。
これは実際に在宅介護生活を経験して、現在は介護生活を終えられた方なら皆さん実感されるのではないでしょうか。少なくとも私は実感しています。
私の大好きな言葉に「神様は乗り越えられない試練は与えない」というのがあるのですが、与えられた試練が大きければ大きいほど、神様に愛されていると思って生きていこうという意味の言葉です。
冬という季節は、人が一番死ぬ季節でもあります。特に老人はそうです。
今が辛くとも、季節は必ず移ろいます。
毎日毎日どうしてこんなに辛い思いをして介護しなければならないのかと思うかもしれませんが、それが終わった時に残るのは「感謝」だけだと知っておいて欲しいと思います。