認知症と家族

先日、街を歩いていてこんな光景に出くわしました。

若い女性が電話しながら歩いていたのですが、段々と声が大きくなり最後は怒鳴りつけるような感じで話しています。

電話の相手は女性のおじいちゃんの様で、どうもそのおじいちゃんが外出先で自分の居るところが分からなくなり孫に助けを求めて電話をしてきたようでした。

会話から察するにこうした事は初めてではないらしく、孫の女性は何故言いつけを守れないのかとかなり感情的になっていました。

以前仲の良い介護士さんから聞いたのですが、認知症のお年寄りが徘徊するのは、その人が住んでいる場所に何らかのストレスや不安要素がある場合が多くて、ストレスや不安を取り除いてあげると徘徊が収まる事が多いと話していました。

このおじいちゃんがどんな環境で暮らしているのか知る由もありませんが、孫の女性の感情的な対応から察するにストレスはあるのだろうなと感じました。

一方で、孫の女性の立場になってみると、自分の仕事や都合もある中、認知症のおじいちゃんを探しに行くことは相当な負担になる事は理解出来ます。

この女性が思わず感情的になってしまうことも仕方ないのかもしれません。

そう考えると、認知症というのは家族にとっても本人にとっても本当に厄介な事と言えます。

これとよく似た状況を他にも何度か目にしたり聞いたりしたことがあるのですが、介護する側がいくら親身に世話をしても、される本人がその事を忘れてしまいますし認知症のご本人にしてみれば何故自分が家族から辛く当たられるのか分からない中で様々な問題が起こってきます。八方塞がりとはまさにこの事だと思います。

私の介護に対する考え方の基本は「在宅介護」なのですが、こと認知症に関してはそうも言っていられないのが現実なのだなと、冒頭の電話の件に遭遇して改めて思ってしまいました。

では施設に入れば安心なのかというと、これも中々問題が多いのですが、少なくとも家族の負担はうんと少なくなりますから、介護するにあたって心の余裕が無くなってきたと感じる場合は施設を探すことをおすすめします。

以前の記事にも書いたことがあるエピソードですが、私が子供の頃はまだ曾祖母が生きていまして、実家で同居でしたから曾祖母の介護を私の母が主にしていました。

順番的には祖母がするのが普通なのでしょうが、なぜか母が介護していまして、その母が時々夜中に一人で泣いている事がありました。

曾祖母は寝たきりの状態だったのですが、認知症の影響で母に対してとても口汚く責め立てる様な事があったみたいで、そんな時に一人で声を殺して泣いていたようです。

当時はまだ介護保険もなく、施設も充実していませんでしたから介護は家族の仕事でした。

冒頭の様なシーンに遭遇する度に、もし当時介護保険があり施設が充実していたら母も泣くことはなかったろうにと思ってしまいます。

そう考えると、こと介護環境に関しては少しはましな世の中になったという事なんですかね。

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