善意から生まれる迷惑

先日仕事で訪れたサービス付き高齢者住宅でこんな光景を見ました。

一人の入居者さんの周りを何と4人の介護士さんが取り囲み、必死に食事を食べさせようとしています。

見たところ80歳くらいの女性でしたが、食卓に向かってはいるのですが目を閉じてしまっていて全く食べる気はなさそうでした。

食事介助をする介護士さんがスプーンで口元まで料理を運ぶのですが口を開けようとしません。

大きな声で呼びかけても反応を示さず、完全に拒否(無視)の状態です。

聞こえてくる介護士さんの会話から察すると、どうやらそうした状態が数日続いているみたいで、その女性の事を心配した他の介護士さんまで集まってきて何とか食べて貰おうと頑張っている風でした。

私はそれを見て、これって虐待に近いかもと思ってしまいました。

介護士さんが職務に忠実で、しかもその女性の事を思って食事を食べて貰おうとしている事は理解出来ます。

しかし食べたくないものを無理矢理食べさせられる事ほど辛いことはありません。

施設では食事の時間は決められていますし、服薬の管理も介護士さんの仕事ですから食事を摂ってもらわないと薬を飲ますことも出来ません。

それで何とか少しでも食べ物を摂っていただき服薬までこぎ着けたいという雰囲気が伝わってきました。

介護士さんの立場からすれば多少無理にでも「食べさせる」事が正しい行為なのは分かりますが、入居者の女性にとっては迷惑どころか虐待を受けている気持ちになったのではないでしょうか。

人間は死が近くなると段々食べなくなるのも自然の成り行きです。

この女性はそろそろそうした時期が来ているのかもしれませんし、そうであるなら無理に食べさせる事は虐待以外の何者でもありません。

こんな光景を目にする度に、やっぱり介護は自宅でするべきだなと改めて思ってしまいます。

介護という究極の個別対応を業務の流れの中に当て嵌めて行おうとするから無理にでも食べさせる必要が出てきてしまいますし、施設としては食べさせる努力もせずに死なせてしまっては遺族から何を言われるかわかりません。

良かれと思って行う悪意のない虐待が、こうして多くの介護施設で発生していると思うと何ともやりきれない気持ちになるのは私だけでしょうか。

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