今回の記事は私の専門の介護食とは関係ないのですが、今現在、要介護になり施設で介護を受けている人達の多くはバブル期に社会の中枢を担っていた世代だなと、ふと思い至ったので…。
バブル期をざっくり30〜40年前と仮定すると、その当時に40代から50代くらいだった世代が今の要介護世代にあたります。
社内での地位も経験値も、社会人として最も脂ののった時期にバブル時代を生きてきた世代というわけですが、今施設の中で介護を受けながら当時の事をどんな風に思い出すんでしょうね…。
私は当時20代でしたが、とにかく景気のいい話ししか聞こえてきませんでした。
今では信じられないかもしれませんが、就職などはひたすら売り手市場で、ある程度の有名企業であっても優秀な新卒を確保することが難しく、内定を出した学生に対して海外旅行をプレゼントするなどの囲い込みが普通に行われていました。まさに隔世の感があります。
この頃までは給料も年々上がっていましたし、アルバイトの時給が一気に上がったのもこの頃です。
さて、ここからが本題ですが、私の記憶が間違っていなければバブル前夜の1980年頃のマクドナルドの時給は600円ほどだったと記憶しています。高校生なら550円とかそのあたりでした。
それから10年程経ったバブル初期の頃、私はちょっとしたレストランチェーンのマネージャーをしていた事があるのですが、アルバイトを募集するのに毎月の様に時給を上げていた記憶があります。
私の店が850円で募集してもすぐに隣の店が870円で募集するといった事が頻繁にあり、お金にシビアな学生などは採用しても中々定着しないといった悩みをどこのお店も抱えていました。
これは飲食業界に限った話しではなく、どこの業界も似たり寄ったりであったと思います。
時代の空気もイケイケドンドンで、職場を変えることはそのまま収入のアップを意味した時代でした。
時代は流れ、バブル崩壊から長いデフレ経済に突入し物の値段が下がるのは良しとしても、給料も全く上がらなくなりました。一方消費税や社会負担費の増額などで可処分所得は目減りを続けて今に至ります。
バブルの頃、人が職場を変える原因の多くはお金でした。目の前に好条件の仕事がいくらでもあった時代です。ヘッドハンティングも盛んに行われていました。ひるがえって今の時代はどうでしょう。
転職して収入がアップする人はごく一部の高いスキルを持った人材に限られていて、多くは勤め先を変える事に収入面でポジティブな動機を見つけられません。
結果的に安い給料であっても我慢するしかなく、仕事があるだけましと自分を慰める事になります。
バブルの頃の人手不足は雇う側にも賃金を上げざるを得ない状況がありました。ある程度の待遇を約束しないと誰も集まらなかったからです。
しかし今の時代の人手不足は賃金を上げる動きにつながりません。年功序列や終身雇用が崩壊して仕事の種類で賃金が決まる様になったからです。
例えば、飲食関連ならこの程度、介護関連ならこの程度といった風に相場が出来上がってしまい、何処で働いても同じ業界の同じ職種ならあまり収入が変わらなくなりました。
これは日本の労働市場がアメリカとそっくりになったという事ですが、そのアメリカの現在の状況を見るに付け、中々明るい気持ちになれないのは私だけではないと思います。