「あなたはあなたの食べたもので出来ている」という諺が西洋にはあると聞きました。
まったくその通りなのですが、わざわざ諺になっているのはそれだけ食事に対する意識をしっかり持つことが大切だという事実を先人達は伝えたかったんだと思います。
もう亡くなりましたが、私の義母などは食べ物に対して全く無頓着な人でした。家族がいる時はそれなりに料理もするのですが、自分一人の時などはとりあえずお腹が膨らめばなんでもいいといった感じの人でしたので、夕食が目の前にあるお菓子だけでも全く平気な人でした。一方で私の実母の方は食べるものに拘りが強すぎるタイプの人で、とにかく一汁三菜の体裁が整っていないと我慢がならない人だった様に思います。
それでどちらが長生きしたかといいますと、無頓着な義母の方でした。
なんだそれなら結局食事に気を遣うことなどないではないかと言われそうですが、義母は長年の偏食もわざわいして晩年は重い骨粗鬆症に悩まされていました。元々背が高くスラッとしたスタイルの良い人だったのですが、どんどん腰が曲がり背骨も曲がり歩くこともままならなくなり、転倒と骨折を繰り返して最後は寝たきりとなりました。
女性の場合特に骨粗鬆症には気をつける必要がありますが、これは普段の食生活が最も大事になってきますから、食事に積極的な意識を持つことがいかに重要かと実感させられた次第です。
ところで、私が介護食について勉強させてもらっているテキストの中に食べる意欲の低下を防ぐ為に「介護者が心がける事」という記述があります。
4つのポイントが書かれているのですが、ちょっとご紹介します。
◎楽しい食事にしよう 1食に1品は好物を
◎美味しそうな香りと盛り付けを心がけよう
◎食べやすい調理形態と食品を選ぼう
◎役立っている感覚〜生きがい〜を持ってもらおう
以上の4つです。最初の2つは何も介護食に限らず言える事ですし、3つめの食べやすい調理形態と食品というのは、食べさせる対象者の身体の状態により全く変わってきますから、一概にどんなものとか言えません。一般的には堅いモノを避けるとか汁物には気をつけようといった事になりますでしょうか。最後の「生きがい」の部分については補足がありまして、なるべく介護される側の方にも出来る範囲でお手伝いをしてもらったりしてコミュニケーションをとりましょうといったことです。
ちなみにこの4つの中で、私の個人的な経験から最も食事意欲の低下防止に効果があるのは、1つ目の「1食に1品は好物を付ける」という事ではないかと思っています。私が父を介護していた時に実感した事なんですが、父は歯が悪くご飯も軟飯でないと文句が出る人でした。なのに大好物のウナギがある時だけは普通の堅さのご飯でも全く文句を言わずにパクパク食べて上機嫌でした。
さすがに毎日ウナギというわけにもいきませんでしたが、ちょっと食欲が落ち気味だなと感じたときには買ってきて食べさせる様にしていました。そしてもちろん効果は抜群!
毎日のお食事を用意される役目の方は覚えておいて損はないかと思います。