麺類が難しくなった時は

腰のある蕎麦やうどんを勢い良くズズッとすすり上げて食べるのは日本人ならではの幸せかもしれません。欧米人にこれをやれと言っても出来ない人が多いと聞きます。

子供の頃から音をたてて食べる事ははしたないことと教育されて育つので羞恥心が邪魔をして出来ないのだそうです。

そんな我々日本の食文化の豊かさの一つに麺類の種類や調理法が豊富なことも挙げていいと思います。

夏は冷やして、冬は暖かい料理として年中色々な麺類を食べることが出来ますが、実はそうめんの様に麺を湯がいてから冷水にとり洗って食べる調理法は世界的に見ても珍しく、イタリアのパスタにしても伝統的なレシピにはそうした調理方法は存在しません。

これは水が豊富できれいな日本だから発達した調理方法と言っていいと思います。

そんな美味しい蕎麦やうどんを長年食べてきたお年寄りも勿論麺類は大好きですから、介護施設でも当然うどんや蕎麦を献立表に載せることは多いですし、人気も高いメニューになっています。

私が介護施設で調理師として働いていた時の話しです。

入居者さんの中で手を思うように動かせない方がいらっしゃいました。食事も箸を使う事は無理で、介護スプーンを使っての食事でしたが何とか自力で介助なしで食べていらっしゃいました。

この方、とても麺類がお好きなのですが、喉の筋肉の衰えなどからすすり上げて普通に食べる事が徐々に難しくなってきました。しかも手が不自由。

それで介護福祉士さんの方から厨房に麺を短く切って提供してほしいと要望がありました。

長さは15センチ程度と指定されました。この長さだとフォークですくって口に持って行った時に何とかすすり上げなくても口の中に収まるのだそうです。

麺類としての食感や雰囲気を残しながらすすり上げずに食べられる長さがだいたいこのあたりという事になります。

ところで私の手元に管理栄養士さんが書いた高齢者の食事についての本があるのですが、その本には麺類は3センチ位に切って提供するように書かれています。

勿論その方が苦労すること無く麺類を食べることが出来るのかもしれません。しかし私は15センチの方をおすすめしたいと思います。

理由は「食事」というのは五感全てを総動員して楽しむ人間にだけ許された文化だからです。麺を食べているという実感が3センチの長さでは感じられないと思います。

ちなみにご家庭で介護されている時にこうした状況になった場合は、ハサミを使うという方法があります。あらかじめ麺を切ってしまうのでは無く、食べる本人が食べやすい長さにハサミで切りながら食べる方法です。

施設の場合は安全面の配慮から入居者さんにハサミを持たせる事は難しいのですが、ご家庭なら問題ありません。その人に合わせたやり方で最後まで食事を楽しんでもらう事が、介護する方もされる方も幸せに過ごす一番の方法だと思います。

 

 

 

 

 

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