スープと洋食とお年寄り

一般的なイメージとして、お年寄りはサッパリとした料理や和食が好きだというイメージがあるのではないでしょうか。

ところが実際に老人向けの施設で調理をしていますと天ぷらやフライなどの揚げ物やマカロニグラタンなどのコッテリした洋食が意外と好まれます。

施設でアンケートを取ったりすることがあるのですが、揚げ物やグラタンはいつでも大人気です。

実はこれ栄養的にも理にかなっていますのでちょっと説明します。

人間歳を取ると一度の食事で沢山食べる事が出来なくなってきます。若い頃は必ずご飯をおかわりしていた様な人でも一膳だけで事足りるようになるわけです。

その上、食べた食事を栄養として吸収する能力も落ちてきます。特にタンパク質を吸収する能力が落ちますので、お年寄りは意識的にタンパク質を摂るようにしないと徐々に筋肉が痩せてくる事になります。

そうしたことを防ぐ意味でも、ハイカロリーな揚げ物やグラタンなどの洋食はお年寄りにとって是非食べて貰いたい料理になるわけです。

特に洋食のメニューにはお年寄りが食べやすい「やわらかくしっとり仕上がった喉越しの良い料理」が多いので自宅で介護されている場合でも積極的に採り入れて欲しいと思います。

例えばグラタンですが、ホワイトソースを使ったグラタンはソースが口の中で食材の散らばりを防いでくれるので誤嚥の心配が少ない料理です。その上料理に使う牛乳やチーズなどの乳製品はカルシウムとタンパク質も豊富ですから栄養の面でも助かるメニューと言えます。

ハンバーグにも同じ事が言えます。歳を取って歯が悪くなると肉が噛みきれなくなり敬遠しがちですが、ハンバーグならフォークで潰しながらでも食べられますし、ソースをデミソースなどの粘度のあるものにすれば誤嚥防止にも役立ちます。

カレーライスを洋食と言って良いかはともかくとして、カレーもお年寄りが大好きなメニューで食べやすい料理のひとつです。

ところで意外と知られていませんが、日本人が大好きな味噌汁が、実はお年寄りには注意が必要な汁物になりまして、さらりとした汁の中に固形物が入った料理は誤嚥を起こしやすく、誤嚥性肺炎のことを「味噌汁肺炎」と言う人もいるくらいです。もちろん誤嚥を怖がって味噌汁を全く食べさせない事はおすすめしませんが…。

その点、ポタージュスープは粘度がある分その心配が少ないですし、手作りすれば色々な食材を「飲む」形で噛まずに食べる事が出来ます。

これは歯が衰えたお年寄りにとってはありがたい事で、ミキサーを使うなど手作りするにはちょっと面倒臭い料理ではありますが、ご家庭での介護生活では是非覚えていただきたいと思います。

例えば、若い頃はゴボウが大好きだったのに入れ歯にしてから避けるようになったのでしたら、ゴボウをポタージュにすれば美味しく食べられます。

ジャガイモと玉ネギをバターで炒める時にゴボウも加えて一緒に煮込み、ミキサーにかけてしまえば美味しいゴボウのポタージュになります。

多少手間がかかりますので、作る時に多めに作って冷凍保存しておけば時間の無い時に助かります。

ポタージュの様に滑らかにしなくても食べられる方でしたら、ミネストローネ風に色んな具材を小さくカットして、コトコト煮込んだスープを最後に軽く片栗粉でトロミ付けすれば栄養満点スープになります。

お年寄りは食が細る分「効率的」に栄養を補給する必要があります。その事を意識した時に、洋食とスープは役に立つのではないでしょうか。

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