肉体年齢と魂の年齢

もう20年以上前の事、当時の私の義父についての話しです。

義父には大学時代からのお互いに「親友」と呼び合うような友達が二人いました。

仕事でもプライベートでも常に連絡を取り合う仲で、かなり頻繁に義父を含めた三人でゴルフに行ったり食事に行ったりと傍目にも本当に仲良く楽しそうな間柄に見えていましたし、その関係は恐らく死ぬまで続いていくのだろうなと誰もが思っていました。

その仲良し三人組の中で真っ先に他界したのが義父だったのですが、パーキンソン症候群という難病で亡くなりました。

義父の場合、とても病気の進行が早くあっという間に車椅子となり、言葉もほとんど出なくなったのですが、丁度そうしたタイミングで大学時代の同窓会があり、義母が義父を車椅子で連れて行きました。

同窓会ですから当然義父の親友二人も来ていたそうで、親友二人を見つけた義母は車椅子を押しながら近づいて行って挨拶をしたそうです。

すると親友の一人から突然に「なんでこんな場所に連れてきたんだ。見たくないから失礼するよ」と言って怒った顔で離れていってしまったそうです。

義母は何が起こったのか理解に苦しんだようでしたが、私もこれについてはその後長らく全く理解出来ずにいました。

体調を崩して辛い状況の中、懐かしい顔を見たくて頑張って同窓会に参加しているのに、他でもない親友にこんな事を言われる筋合いはありません。

さて、そんな事があってから長い時間が経ち、私は出入りしていたサービス付き高齢者住宅でこんな体験をしました。

その施設では、元気な方は食事をレストランフロアで食べる決まりです。毎日毎食レストランフロアに来ていると、自然と利用者さん同志のグループが出来て、グループ毎に同じテーブルで食べるようになります。

そんなあるとき、4人組のとても仲の良さそうなグループの中の一人、Aさんが入院しました。

Aさんが入院中は残った3人だけで食べていて、空いた席で誰か他の人が食べる事はありませんでした。

そしてようやくAさんが退院して来たのですが、入院前は自立の状態だったのが、退院後は要介護状態になっており、車椅子を介護士さんが押してレストランフロアに連れてこられました。

食事介助は付かなかったので、介護士さんはいつものグループの席にAさんを座らせて立ち去り以前と同じ様に食事が始まりました。

問題が起こったのはこの食事が終わってからです。

実は食後すぐに介護士さんに残りの3人のメンバーからクレームが入り、次回からAさんは別のテーブルで食べて貰う事になってしまいました。

理由は要介護の人を目の前にして一緒に食べると食欲が無くなるから。こちらまで要介護になった気分になるからだそうです。

この話しを聞いたときにすぐに思い出したのが冒頭の義父の話です。

義父の親友も施設のグループの人も、世間的には立派な高齢者です。

しかしこうした話しを見聞きするにつけ、肉体年齢とは裏腹に精神的にはとても幼い印象を受けます。

魂にもし年齢があるとすれば、この方達はまだ生まれたての子供かもしれないと思った出来事でした。

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