家族と同じ物を食べる事の大切さ

最近は核家族が当たり前になった事と共働きが増えた影響で、家族がそれぞれバラバラに食事を摂る事が増えたと言います。おじいちゃんおばあちゃん含めた家族全員でいただきますと合掌してご飯を食べるアニメサザエさんの世界が残っていたのは一体いつ頃までだったのでしょうか。

昭和が平成になると同時に日本中が雪崩を打ったようにバブルへと向かい世の中全体が一種の集団ヒステリーの様になり、やがてバブルが弾けたわけですが、このバブル経済をリーダーとして牽引した世代が丁度今の「要介護」世代にあたります。年齢で言うと80歳代の方々になります。

この世代の方々が育った時代はまだ核家族化が進んでおらず基本的には三世代同居の大家族で育った方が多いはずです。

そんな家庭の夕食前の一時をちょっと想像してみてほしいのですが、台所からはお母さんの作る煮物の匂いが家全体に漂います。居間ではおじいちゃんおばあちゃんと子供達がテレビを見たりしながら思い思いに過ごしています。

そうこうしている内にお父さんが帰ってきます。テレビでは「ヤン坊マー坊天気予報」が流れているかもしれません。

お父さんは帰ってきて開口一番こんな事を言いました。

「おっ、いい匂いだなあ。今日は肉じゃが?」

お母さんはそれに答えるでもなく答えないでもなく家族皆に「さあ、ご飯が出来ましたよ。子供はお茶碗並べるのを手伝いなさい。」などと言っています。

こうして懐かしい昭和時代の家族の団らんが始まります。

さて、ここで時代は一気に現在に戻ります。

かつての大家族は姿を消し、核家族で育てた息子や娘は自分も核家族を形成するべくそれぞれ家を出てしまっています。

そうして月日は流れお父さんとお母さんが二人暮らしになってからすでに20年の歳月が流れました。いつの間にかお父さんは要介護の状態となり、お母さんも要支援となりました。残念ながらもうお母さんは一人で買い物から料理までこなすことが出来ません。

仕方なく子供達に助けを求めることとなりました。

幸いにも近くに住んでいた娘さんが食事の支度を担当してくれることになったとしましょう。その時に自分とお母さんには手作りの料理を用意し、要介護のお父さんには別で宅配の介護食を食べさせるとします。

この時のお父さんの気持ちを想像してみてください。

さぞかし残念な気持ちになるのではないでしょうか?

要介護でずっと家にいる人にとっては、食事は最大の楽しみです。たとえ嚥下や咀嚼に多少問題があったとしても、出来れば自分も同じ物を食べたいと思うのではないでしょうか。

歳を取れば昔の事がやたらと思い出されます。

恐らくこのお父さんも、昔家族皆でいただきますと合掌してご飯を食べた頃の事を思い出しながら夕餉の時間を待っていたかもしれません。

娘さんが立つ台所から漂ってくる煮物の香りを味わいながら、昔大家族で育った頃の食事風景を思い出しているかもしれません。それなのにその美味しそうな香りは自分とは関係なかったとなれば、やはりがっかりすると思います。

介護食というと何やら難しいモノのように感じるかもしれませんが、少しの工夫で皆と同じ物を食べさせる事が出来ます。難しいことではありません。

孝行のしたい時分に親はなしともいいます。今我々にできるちょっとした事が、お年寄りの生きがいともなるのです。

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