介護と資本主義

他に思いつかなかったのでなんだか大げさなタイトルを付けてしまいましたが、内容はいつもの介護関連です。

色々な介護施設と関わる仕事をしていると、時々頭に???が飛び交う様な事に遭遇する事があります。

そのたびに思う事は、「介護で儲けようとしてはダメ」という事です。

もっとも最近に「???」と思ったことをひとつご紹介します。

そこは富裕層向けの有料老人ホームで、元気で自立されている方は、1階にあるレストランフロアまでご自分で来られて食事をする形になっています。

こういったパターンの老人ホームの食事というのは基本的には予約制になっていまして、事前に入居者さんに献立表を見ていただき、気に入れば予約を入れて貰う仕組みです。

我々作る方は予約していただいた食数分だけを用意するので無駄も出ません。

誰が何を予約したのか管理するのは施設の介護スタッフさんと厨房側では栄養士が主にその役割を担います。

食べる側のお年寄りは、自分が何を予約していたのか忘れていてもレストランまで来てスタッフに聞けば分かる仕組みです。

ですのでお年寄りは食事をするに当たって、レストランで何かをしなければならない様な事はなく、ただそこに行けば自分が予約した料理が運ばれてくるのが普通の状態です。

ただ、それだと予約をし忘れていた場合とか、急にレストランで何か食べたくなった時に融通が利かないことも事実です。

それと、こうした富裕層向け有料老人ホームの居室には、ちゃんとしたキッチンもありますので、料理をする方は自炊で済ますこともあります。

施設の方としては、出来れば入居者全員に施設内のレストランで食べて頂いた方が利益があがりますので、普段自炊の人にも出来ればレストランで食事を摂って頂きたいという動機が常に働きます。

この入居者の人数に対してレストランで食事を摂る人の割合を業界用語で「喫食率」と言うのですが、どこの施設でも喫食率を上げる事はそのまま利益の増加に繋がりますのでそのために色々な事を考えます。

で、冒頭の「頭に???」に戻るのですが、ある有料老人ホームで喫食率を上げるために一般的な予約制ではなく「自由喫食」と呼ばれる形に変更しました。

これは事前に予約しなくてもいきなりレストランに来て注文すれば食べられるシステムで、街場のレストランと同じと考えてもらっていいかと思います。

その際に、当然レストランで注文をするわけですが、この施設では注文する為のシステムにIT技術を導入しました。

事前に入居者全員にQRコード付きの端末を持たせ、それを読ませることで注文を入れる仕組みです。

ここでちょっと考えてほしいのですが、入居者の方は全員超がつくほどの高齢者です。この年齢層の方にとってQRコード付きの端末を読み取り機に読ませる段階で相当ハードルが高いことは普通に想像出来ませんか?

施設は食事のオーダーを自由喫食に変えることで喫食率を上げようとしたのですが、結果は全く上がりませんでした。

つまりお年寄りにとっては食事に際して面倒な事が増えただけの結果になったわけです。

基本的にお年寄りというのは、一旦生活が落ち着くと変化を嫌います。施設側の下心満載の施策がお年寄りにストレスを与えただけの結果になったというお話しでした。

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