和食にメインディッシュは不要です

料理を作る人に限らず、食べるだけの人であっても「今日の晩ご飯は何にしようかな」と考える時には普通「トンカツにしよう」とか「鯖の煮付けがいい」などの様にメインになるおかずを念頭に考えます。

現在の日本人はこれが普通だと思っていますが、お米を主食として食べてきた日本人にとって、あくまでもメインは「ご飯」であって「おかず」を真ん中に置いて考える「メインディッシュ」という考え方はありませんでした。

この考え方が一般に普及したのはそれこそ戦後のここ80年程のことで、食の欧米化と伴に普及したというのが実際の所だと思います。

料理研究家の土井善晴さんが著書などで「一汁一菜で良い」という考え方を訴えていらっしゃいますが、これなどはまさに「ご飯」を真ん中に置いた日本古来の姿に戻ろうよという一種の啓蒙活動でもあります。

日本人にとっての「おかず」とは、あくまでご飯を沢山食べる為の「おかず」であって、ご飯の引き立て役としての「おかず」が伝統的な日本の食事風景です。

こうしたお米主体の食事から栄養をバランス良く摂ろうとした時にとても便利で重要なのが「汁物」ですが、具沢山の味噌汁と漬物が少しあれば、それだけで食事が完結するのが庶民がずっと食べてきた和食だと言えます。

これは私の専門分野の介護食でも言えるのですが、おかずは最低三品は用意するとか、肉と野菜のバランスは良くするとか、難しい事を考え出すともうそれだけで食事の準備が億劫になってしまいます。

それで結局何も作らずにスーパーで買ってきた惣菜を並べてお終いにするのでしたら、味噌汁の中に冷蔵庫の余り物を片っ端から入れてしまって、後はご飯と梅干しだけでもいいのではと思います。

忙しい時や余裕が無い時にはそうした食事で済ます代わりに、少し心や時間に余裕が出来れば、冷凍庫の中で冬眠していた材料を溶かして調理してもいいですし、煮物を多めに作り置いてもいいのではないでしょうか。

毎日の食事を面倒だと思わずに準備するコツはこんな所にもあるのではと思います。

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