先日、かつて関わっていたボランティア団体の勉強会でお話しをさせていただく機会がありました。
その時、知り合いの方と久しぶりに話す機会があったのですが、私が老人の介護施設で料理を作っていた話をしましたらその方の親の介護の話しになりまして、こんな話を聞きました。
その方の親御さんは3回の食事のうち2回が胃瘻でお昼ご飯の1回だけが普通に口から食べる事を許されているんだそうです。
そのせいか、お昼ご飯をことのほか楽しみにされていて、今ではお昼ご飯が唯一の生きがいの様になっているとおっしゃっていました。
それだけにそのたった1回のお昼ご飯が不味かったり嫌いなものだったりすると、とてもがっかりして機嫌が悪くなるのだそうです。
この話しを聞いて、「あぁやっぱりそうなんだ」と思いましたし、調理する者として気持ちの引き締まる思いでした
介護施設では調理するスタッフと施設の入居者さんがお話しする機会はほとんどありません。施設によっては全く接触の機会が無いといった事もあります。
ですので、施設の利用者さんの食事に対する思いを直接伺うことはまずありません。
それが普通ですから、施設利用者さんにとっての食事の重要性は頭で分かっていても中々実感が伴わないのが実情です。
施設の介護者の方も、食事の配膳や介助などは早く終わらせて次の業務に取りかかりたいと思っていらっしゃるかもしれません。集団生活を強いられる施設では致し方ない面もありますが、そこで24時間を過ごしこれといって楽しみのない生活を送っていれば、食事だけが生活の潤いとなり楽しみにとなるのは当然のことかもしれません。
これはご家庭での介護であっても同じ事です。施設ほど不自由を強いられる事はないにしても、介護してもらう当事者の方は台所から漏れてくる美味しそうな匂いに想像を膨らませているかもしれません。それがいざ食事の段になったら自分だけ市販のパッケージされた介護食で家族とは別のおかずだったりするとがっかりするのではないでしょうか。
多少面倒でも、ご家族と同じ物を食べやすいように工夫して提供することが何よりのご馳走になります。人間にとって食べる意欲と生きる意欲はイコールですから、このあたりの感情を大切にしてあげてほしいと思います。
これは私の個人的な感想なので事実とは違うかもしれませんが、施設で体調を崩し病院に行きそのまま入院した方が再び施設に戻ってきたときに、食事が「普通食」から「刻み食」や「ミキサー食」などに変わって戻ってくる方が多くいらっしゃいます。
そうした方は、その後ほどなくして亡くなる方が多い印象です。そうした事を経験する度に、やはり「食」と「命」は直結しているんだなと思う事しきりです。