映画館での出来事

先日、一人で近くの映画館に映画を見に行ったのですが、こんな出来事がありました。

40代くらいの良い息子さんと、70代くらいのお母さんが二人で映画を見に来られたのですが、お母さんの方は車椅子でした。障害としては左側の片麻痺の状態でしたが、少しは動かせるレベルの片麻痺でした。

その映画館は、シネコンスタイルで、外の廊下から上映室に通じる通路を入ってきたらスクリーンの前の一番低い位置に出て、そこから階段状にせり上がっている客席に各自登って行って座るスタイルでした。私は早くに自分の席に座っていました。

この親子連れが入ってきたときは、息子さんが車椅子を押して入ってこられたのですが、二人の座る位置を下でお母さんと確認している風でした。

息子さんが「この列のあの辺りや」とお母さんに指し示していましたが、私の方を指さしていたので、近くに座られるのかなと思って見ていたのですが、息子さんはお母さんを立たせて手摺に捕まらせたと思ったら、そのまま置き去りにして外に出て行ってしまいました。

多分、車椅子をどこか邪魔にならない場所に置きに行ってすぐに戻ってくるのだろうと思って見ていたのですが、お母さんは息子さんを待つそぶりもみせず、そのまま一段一段手摺に捕まりながら階段を登ろうとしています。

ゆっくりとした動作なので時間がかかるのですが、息子さんは一向に戻ってきません。

傍目にも危なっかしい状態でしたが、とにかくお母さんは半歩ずつくらい何とか足を運び、一段一段登ってこられました。

そうして予想通り、私が座っている列で登るのをやめて、今度は平行に私の方に向かって進もうとしています。その為に今つかんでいる手摺りから次の手摺りに移行する必要があるのですが、その手摺りから手摺りの距離が少し遠く、完全に手摺り無しの状態で二歩ほど歩く必要がありそうでした。

その時に、このお母さんに一番近い位置に座っていたのが私だったのですが、手を貸すべきかそれとも貸さない方が良いのか、迷ってしまいました。

というのも、このお母さんが一人で来られていたのなら迷わず手を貸していたと思うのですが、介護者である息子さんが一緒に来ていて、しかも座席の位置を教えた後で自分はどこかに行ってしまいました。

つまり息子さんもお母さんご自身も介助なしで座席まで行けると判断して行動していると解釈出来ます。

そんな考えが頭をよぎったのと、もしかしたらリハビリの目的もあって、あえて自力にこだわっていらっしゃるのかなとも思ってしまい、ほとんど目の前で右往左往している方を見ながら、私は何もせずに椅子から動きませんでした。勿論、いざという場合にはすぐに手伝おうと思って見ていたのですが、私が何もしないと思った他の方が痺れを切らして駆けつけて来られ、無事に次の手摺りを掴むことが出来、そのまま介助を受けながら自分の席に着かれました。

息子さんはというと、それからしばらく経ってから大量のポップコーンとドリンクを持って戻ってこられ、何事もなかったかのように二人して映画を見たという顛末です。

その時に思った事は、私が介護に関連する仕事をしていて、なまじ色んな状況を見たり聞いたりしている分、余計な事を考えてしまったのかもしれないという事です。

映画館は介護施設でもなければリハビリ施設でもありません。やはり近い所にいた私が素早く手を貸すべきだったと後悔した出来事でした。

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