感謝しながら食べるという事

もう何度か記事にしていますが、介護施設で調理をしていると、たまたま自分の作った食事が誰かの「人生最後の食事」になってしまうということが度々あります。

今年はまだ始まってさほど経っていませんが、つい先日も私が作った料理を施設の食堂で食べていたお年寄りが、食事中に気分が悪くなり救急搬送されましたが、そのまま亡くなるという事がありました。

実は昨年の12月にも同じ様な事がありまして、立て続けにそんな経験をしています。

こうした事を経験する度に、人間はいつ死ぬのか分からないのだから、目の前の食事に心から感謝をして食べなければいけないと気づかされます。

人間という生き物は、50代に入った頃から死ぬ確率がぐんと上がるのだそうで、そう言われてみれば、私もいつの間にか自分より若い人の訃報を度々目にするようになりました。

ところで、長く生きてきますといつの間にか染みついた「健康常識」というものに洗脳されている事に気づきます。

例をあげます。

私は老人の食事や栄養について人前で話しをする機会があるのですが、そんな時には「一般論」としての高齢者の栄養についてお話しさせてもらいます。

一般論というのは、現在のところ「常識」とされている内容を話すわけですが、例えば「お年寄りの場合は、高タンパクで高カロリーを意識しましょう」などと話します。

これを日々の食事で具体的に表現すると、脂の乗った肉や魚をメインに献立を考えて下さいとなります。つまり痩せにくい食事をおすすめするわけですが、これは現在では少し太めで肉好きな人の方が健康で長生きするとデータで出ているからです。

ただ、この「常識」もいったいいつまで「常識」でいられるかは全く未知数です。ある程度の年齢の方なら納得されると思いますが、食と健康にまつわる「常識」ほど当てにならない物はありません。

例えば最近ジワジワと「常識」から「非常識」に移行しつつあるのが「減塩」についての常識ではないでしょうか。

以前は血圧を下げるためには減塩はマストだと言われていましたが、最近では専門家の中からも減塩は体に悪いと言う方が増えてきましたし、特に高齢者については減塩は辞めさせるべきだと主張する専門家の方も増えてきました。

最も劇的に常識から非常識に変わったのは食物繊維ですが、これについては今更言うまでもないですね。

そんな風に考えると、やはり人間はその日その時に食べたいと思った物をあれこれ考えずに素直に食べるのが正しい食事の作法ではないかと思います。

今日元気でも、明日はどうなっているか分からないのが人間ですしそれが人生です。

だから今日も一日、好きな料理を「作って、食べて」生きていけたらと思っています。

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