入れ歯と認知症と低栄養

入れ歯と認知症がとても深く関わっている事をご存知でしょうか。

入れ歯といいますか、正確に言うと咀嚼して食べる事と認知症の関係です。

色々な調査が過去になされていまして、例えば一般の高齢者施設入居者と認知症専門病院の入院者とを比較した場合、一般の高齢者施設の入居者に占める義歯不適合の割合は29%だったのに対して、認知症専門病院の入院者の場合は63%が義歯不適合だったという結果があります。(義歯不適合とは入れ歯が合っていない事)

これとは別に、入院中の入れ歯使用者における認知症の有無を調べたところ、義歯不適合の方は75%が認知症だったのに対して、義歯適合の場合の認知症割合は45%だったと言うモノもあります。

こうした結果を見ると、人間にとって噛むという事は認知機能を維持する上でもとても大切な行為だと言えます。

それから認知症とは関係ありませんが、平衡感覚も噛むことと関係があると言われていまして、咀嚼能力を維持している人は、体勢を崩したときに立て直す反射能力も維持されているそうです。

つまり転びにくいという事ですから、これはお年寄りにとってとても重要な事だと思います。(上記全て日本咀嚼学会「咀嚼の本」より)

こうした事実をみるにつけ、人は普通に食べ物を食べられなくなった時がそのまま健康寿命の終わりを意味するのだなと感じます。

私は普段、在宅介護をされている方や訪問介護をされている方などにむけて介護食の知識や技術を教える講座をやっていますが、受講される生徒さんからお聞きする悩みの多くは「噛めない」事に関する事が多いです。

そうした悩みをお聞きした時に、食材の選び方だったり調理の工夫をお伝えするのですが、こうした工夫をせずに放っておくと結果的に食べる量が減ってしまい、お年寄りに多い「低栄養」の状態に陥ってしまいます。

低栄養の状態が続くと当然痩せていくわけですが、一番問題なのは筋肉の量が減ることです。筋肉量が減ることで日常動作の何でも無い事が徐々に出来なくなっていくとそのまま要介護や寝たきりへつながってしまいます。

特にお年寄りの場合、食べたものを栄養として吸収する能力も落ちていますので、同じだけ食べても若い頃の様に血肉になりません。つまり逆に多く食べる必要があるわけです。

特にタンパク質は若い人の4分の1ほどしか吸収しないとも言われています。

だったらそれを補う為には少量でも栄養価の高いものを食べさせる等、若い頃とは違う工夫が食事に関して必要になってきます。

介護食というと小さく刻んだり噛む必要の無い食事のイメージがあるかと思いますが、しっかりと「噛んで飲み込む」事を基本に考えるのが、実は介護食の基本なんです。

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