刻み食はかえって危険かもしれません

今回は介護施設や病院などではよく提供されている「刻み食」について書いてみたいと思います。「刻み食」というのは噛む能力が衰えた方に食事を提供する際に、出来上がったお料理を小さく刻んで提供する事を言います。この状態がさらに進んでしまうと「ミキサー食」と呼ばれる流動食になってしまいます。

施設などでは対象者の状態によって「粗刻み」とか「極刻み」などとオーダーがありますので、粗刻みなら数センチ程度の大きさに、極刻みなら数ミリ程の大きさに刻んでお皿に盛り付けて提供する事になります。

さてここで考えて欲しいのですが、施設の場合食事にあてられる時間も限られており団体生活の決まったスケジュールの中で全てを処理する必要に迫られます。

結果的に咀嚼の力が衰えた方に対して咀嚼の必要がない状態の食事を提供して何とか時間内に全ての入居者の食事を終わらせる為にこうした刻み食を提供する訳です。

勿論ご本人の希望で刻み食にする場合もあるのですが、多くは介護側の都合が優先されるのが現実ではないでしょうか。

ところがこの「刻み食」は誤嚥の心配がある方にはちょっと危険な場合があるんです。

誤嚥というのは自分のタイミングで上手に飲み込むことが出来ず、気管の方に食べ物が入ってしまうことを言います。当然むせて咳き込むわけですが、お年寄りの場合咳き込んでも気管から食べ物を排出できずにそのままになる事があり誤嚥性肺炎の原因を作ってしまいます。

誤嚥を防ぐ為にはお料理にトロミをつけたりして口の中で食べ物がまとまり安くしますが、刻み食の場合あまり噛まないために唾液の分泌がどうしても少なめになります。

よく噛んで食べれば唾液も十分に分泌されるのでトロミ調整剤など使わなくても食べ物がまとまってくれるのですが、刻み食の場合は唾液の分泌が少なく口の中で食材が散らばったまま飲み込もうとしてしまいがちです。

結果むせて咳き込む事になりがちですので、ご家庭で介護されている場合はなるべく刻み食にせず、時間がかかってもよく噛んで食べてもらい唾液の分泌を促す事で安全に食べてもらえる工夫をしてみましょう。そしてこれは何より機能の維持にも役立ちます。

また一度完成したお料理をもう一度まな板の上で刻む行為は、せっかく加熱して食中毒の心配が無くなったお料理にもう一度食中毒菌が付着する機会を作るようなもので、食品衛生の面から見てもあまりおすすめできません。

どうしても刻む場合は、まな板を使わず直接お皿の上で清潔なハサミなどを使って刻む方が衛生面では安心です。

人の身体機能というものは、使う事を辞めた途端に恐ろしく速いスピードで失われていきます。ちょっと転んでケガをしたお年寄りが病院に1週間入院しただけで廃用症候群の兆候を抱えて退院してくる話しは良く耳にします。食べる事は生きる事に直結した行為です。噛めない飲み込めないと諦める前に出来る工夫がないか今一度考えてみましょう。

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