一緒に食べる一緒に作る

昔、松田優作さんの主演で「家族ゲーム」という映画がありました。

この映画の有名シーンと言えば、家族が横一列になって食事をするシーンです。

映画が公開された当時はこのシーンに違和感を感じる人が多かったからこそ今でも語り草になっているわけですが、今の時代に公開されていたら果たしてどうだったでしょうか。

この映画が公開されたのは1983年ですので、今を遡ること40年ほど前になります。

当時も世の中は核家族化が進んでいましたが今ほどでは無かったと思います。

しかし今では核家族がスタンダードになり、子供が独立した家庭では二人暮らしか一人暮らしのどちらかになります。独立した子供も結婚しなければ基本的には一人暮らしです。

つまり現代は孤独に食事をする「孤食」が当たり前になった世の中と言うことも出来ます。

かくいう私も田舎の実家に父を一人暮らしさせて自分は核家族で長年暮らしていました。

父が体調を崩して介護するために私が実家に引っ越したときに父がこんなことを言ったのを覚えています。

「お前が来てくれる前は一日一回も誰とも話しをしない日が多かった。」

こうした事が当たり前の世の中はやはり間違っていると感じます。

ところでアメリカ西海岸でオーガニックレストランを経営し食に関する啓蒙活動家としても有名なアリス・ウォータースをご存知でしょうか。

彼女が進めるエディブル教育と呼ばれるものは、学びの中心に「食」と「農」を置き生き方や哲学としてのオーガニックを子供達に実体験を通して学ばせようというものです。

彼女は自身の著書の中で食についての哲学を述べていますが、その中の重要な要素に「Eat together(一緒に食べる)」と「Cook together(一緒に料理する)」があります。

孤食が当たり前となった今の世の中ではもう一度見直すべき大切な要素ではないでしょうか。現在、要介護か要支援のご家族を抱えていらっしゃる方も基本的には別世帯で暮らしながら出来る範囲で様子を見に行くと言った事が多いのではないかと思います。

その際は是非一緒に食事をしてあげて欲しいと思います。それがもし実家ではなく施設であったとしても、一緒に食事をすることで気付くことは多いはずです。

介護とは先の見えない大変な苦行の様に思われがちですし、実際にそういった面もありますが、だからと言って施設に放り込んでおしまいでは何とも悲しいと思います。

時には同じ食卓を囲み、昔話に花を咲かせられるのは同じ記憶を共有する実の子供にしか出来ない素敵な孝行だと思います。