先日、「ホーユー破産のニュースで思う事」という記事を書かせていただきました。それに関連したニュースをYahoo!ニュースで見かけましたので、もう一回、この話題にお付き合い下さい。
ネットの記事では帝国データバンクにFNNの記者の方がホーユー破産のニュースに関連して、給食事業者全体の現状について色々聞いた内容だったのですが、こんな文章で締めくくられていました。
『今回の取材で印象に残ったのは、給食事業が「もはやビジネスとして成り立っていない可能性を示している」という指摘だ。事業を停止する給食事業者をこれ以上、増やさないため、「ただ、安い業者へ委託する」という状況が変わることを期待したい。』
私の前回の記事でも指摘させていただきましたが、とにかく安ければ良いといった姿勢で、契約更新時期が近づく度に業者の変更をちらつかせて値段交渉に応じない施設はいくらでもあります。
こうした施設に共通するのは、担当者が自分の社内での立場にしか興味が無く、給食業者を安く買いたたくことで何処にしわ寄せが行くのかまで考えが及ばないことです。
その極端な例が、先日のホーユー破産のニュースに繋がるわけです。
私が具体的に知っている例を二つあげます。
どちらも高級なカテゴリーに分類される老人向けの施設の話しです。
一例目は、最初の施設担当者は食事の重要性をとても理解していて良い食事を出していたのに、次の担当者が食事の重要性を理解していなかったばかりに結果的に失敗した例です。
この施設はホテルのような設備とレストランフロアが売りの施設で、そこで提供する食事に関しても入居者を募集する一番の売りにしていました。
私もオープンから関わっていたのですが、オープンから3年ほどはかなり良い食事が提供出来ていたと思います。ところが施設長が交代になり、新しい施設長が食事に関して全く理解の浅い方だったために、すぐに安い給食業者に委託先を変更してしまいました。
入居者の方に対しては、更に良い食事を提供するために厨房の業者を新しくしましたとアナウンスしていましたが、実際には買いたたいていたわけです。
結果、この施設の食事は格段に悪くなってしまい、退去者が後を絶たなくなってしまいました。慌てた施設側は、施設長を交代させましたが給食業者に支払う金額の増額には応じなかったため、食事内容は改善されず、今では半分近くが空き部屋になっていて復活する気配はありません。
二例目はこんな話しです。ここは施設のオーナー企業が途中で変わりました。そのタイミングで給食事業者も変更になったのですが、色々な業者から見積を出させ、一番安い業者に委託しました。
この時に一番安い見積を出したのは先のホーユーとは違い、業界では名の通った大手給食事業者でしたので見積金額も問題無いように思われました。
しかし蓋を開けてみたら人件費部分の見通しが甘く、とても黒字は無理な見積りで請けてしまっていた事が発覚しました。
慌てた事業者は施設側に委託費の増額をお願いし、施設側も一旦は了承しました。
ところが、委託費を増額するに当たって施設側は入居者の方に食事代の値上げという形で負担を求めました。
もっと良い食事を提供する為に、何とか食費を上げさせて下さいとお願いしたわけです。
入居者の方も渋々それを了承したまでは良かったのですが、増額分のほとんどを施設が取ってしまい、委託事業者には少ししか廻ってきませんでした。
この場合、委託業者としては現状の業務委託費では施設の「高級」といったステータスに合う食事が提供出来ないから増額をお願いしているので、利用者の方に負担頂いた増額分は全額食事代の方に回すのが筋なのですが、実際には施設の黒字は増えた一方、委託事業者の赤字は解消されないままとなってしまいました。
こうした例に共通するのは、施設の担当者が自分の短期的な業績のみに固執した事で、施設を利用するお客様に結果的に迷惑を掛けてしまっている事です。
ホーユーの場合でも、給食業務を停止した事業所は全て赤字の事業所で、黒字の事業所についてはホーユー破綻後も給食の提供を続けています。
日本人は一体いつからこんな子供じみた仕事をする様になったのでしょうか。
我々は一体何のために、誰の為に働いているのか。もう一度根本的に考え直す時期に来ていると感じます。