私の介護食講座の生徒さんはだいたい50代前後の方が多くて、丁度自分の親にこれから介護が必要になるタイミングの方が多いのですが、時々こんなことを聞かれます。
「要介護にならないための食事術ってありますか?」
この質問の答えは「あるとも言えるし無いとも言える」となってしまうのですが、理由は個別の状況が違うのでその人にとってはこうした方がいいけど別の人にとってはしない方がいいといった事が出てきてしまうからです。
ただ、一応全ての人に対して共通の注意事項といったものはありまして、そうした事をちょっと書いてみたいと思います。
一番は、体重を落とさないという事です。
この事はちょっと前の記事「60歳からの食事について」でも書きましたが、人生100年時代などと言われる今の時代、データを紐解くと元気で長生きするタイプは「ちょっと太めで血圧も高め」の方が多いという事が分かってきています。
これは老年医学の専門家でもある医師の和田秀樹さんの著書などに結構詳しく書かれていますので、興味のある方は参照なさってください。
人生の最晩年を迎えるに当たって、何と言っても大事なのは実際の寿命ではなく「健康寿命」ですが、男女平均して10年くらいは健康寿命より寿命の方が長いのが現実です。
つまりざっくり10年は要介護の生活を経て死ぬ事になる訳ですが、そこを出来ればゼロにしたいのが人情というものですし、それが実現出来れば自分も家族も皆がハッピーです。
その意味では、人間にとって「中年太り」は元気な晩年を迎えるための至って自然な流れであり、これをメタボなどと言って目の敵にしてはダメという事です。
40代から50代にかけての体重増加は健康長寿へのパストートと思って喜びましょう。
次に気にして欲しいのはタンパク質をしっかり摂るという事でしょうか。
これは「体重を落とさない」にも通じるのですが、一般的に人間歳を取ると徐々に食が細くなっていきます。
にも関わらず代謝は悪くなって行きますから、同じ量を食べたとしても吸収される栄養素の量は少なくなってしまいます。
そうなると最も必要な栄養素を優先的に食べる事が、体重を落とさずに筋肉量や骨密度を維持する際に有効な手段となります。
その「最も必要な栄養素」がタンパク質という事になります。
これは人の体がほとんどタンパク質と水で出来ている事実を考えればお分かり頂けると思います。更に言えば食べ物が胃に入ったときに、真っ先に消化される栄養素もタンパク質です。この事実からもタンパク質の重要性は分かるのではないでしょうか。
以上の二点が誰にでもあてはまる「要介護にならない食事術」と言えると思います。
そして最後に大切なことは、ストレスを溜めないこと。
ちょっとメタボでもダイエットなどせず、血圧高めでも薬など飲まず、もちろん減塩もせず、自由気ままに過ごすのが健康長寿のコツではないのかと思います。