要介護状態になって介護施設に入居しているお年寄りにも当然ですが若いときがあり、何かしら社会に貢献して生きてこられたわけですし、何かに熱中した時代もあったでしょう。
そんなお年寄りの過去がちらりと垣間見えた出来事を二つご紹介します。
私が以前関わっていた施設で、とにかく野球好きなお年寄りがいらっしゃいました。
この方の日課は、施設に届くスポーツ新聞をじっくり読む事と、前日の試合についてあれこれと蘊蓄を述べることでした。
たまには私も贔屓チームの選手について質問したりしたのですが、まさに立て板に水のごとく何故調子が悪いのかとか、どうすればもっと良くなるとか専門家顔負けの詳しさでお話しして下さいました。
お年寄りには二種類ありまして、若い頃の話しを積極的にしてくれる方と、逆に話したがらない方があります。
この野球好きな方は、あまり話したがらないタイプでしたが、話題が野球に関わる事にかんしては突然饒舌になる珍しい人でした。
それで私もつい聞いてみたくなり、昔野球に関わるお仕事でもされていたんですかと聞いてしまいました。
すると、ちょっと照れたような顔になってボソッと「アマチュアの試合だけど審判員をしていた」と答えが返ってきました。
それ以上は何も言われませんでしたが、やはりそういった過去があったのかと納得した思い出があります。
この方にとっては今も昔も野球が人生の大切な部分になっていて、要介護となった今も元気の源は野球なのだなと思いました。
こんな方もいらっしゃいました。
女性で車椅子、しかも人工透析に通っている方でしたが、自分よりも身体が不自由な人が目の前に居ると、食事介助や身体介助を自分の事は差し置いてやろうとする人でした。
この行為は施設としては絶対にやらせてはダメな行為になりますので、見つかったらいつも叱られていましたが、不自由な人を見たら考えるより先に身体が動いてしまうのでしょうね。
頭はしっかりしている方でしたので、認知症でそんな事をしているわけではなかったと思います。
三つ子の魂百までと言いますが、若い頃に身につけた趣味や特技はそのまま死ぬまで、人生を豊かなものにしてくれるのだと思います。