料理と調理器具

「弘法筆を選ばず」という言葉がありますが、これは料理の世界にはあまり当てはまらなくて、いくら腕の良い職人さんでも使う道具が悪ければやはり満足のいく結果は得られません。

逆に、使う道具から発想して新しい料理のアイデアが生まれたりしますから調理を仕事にするものにとって、道具の善し悪しはかなり重要です。

一番分かりやすいのが卵料理で、和食でしたら卵焼き用の四角い形をした鍋が無ければ卵焼きは作れません。

普通の丸いフライパンでも卵を焼くことは勿論出来るのですが、あんな形にはどうしてもならないのはお分かり頂けると思います。

洋食の場合でも、オムレツを焼くときには程よい大きさのよく手入れされたフライパンが無ければベテランのコックさんでも満足のいくオムレツは作れないものです。

こうした「道具」というものは、時代とともに進化しますし変わってきます。

私が駆け出しのコックだった約40年前と今とを比べると一番大きな道具の進化と呼べるものはスチームコンベクションオーブン、略してスチコンの登場です。

今ではこのスチコンは、ある程度の規模がある厨房ならどこにお邪魔してもだいたい設置されています。

家庭における電子レンジの登場に匹敵するほど革命的に厨房の仕事を変えてしまったのがこのスチコンです。

簡単に説明すると、一台でオーブン料理は勿論の事、蒸す、茹でる、揚げる、炒めるといったほぼ全ての調理が出来てしまうといったものです。

他にもフライヤーなんかも私が駆け出しの頃はあまり見かけない道具でした。

もっと根本的な部分ではガスコンロの代わりにIHコンロというのがありますが、業務用の厨房でもIHコンロの厨房があります。

これはそれぞれ一長一短がありますが、IHの場合使う鍋の状態でも仕上がりが影響を受けるので個人的には色々融通のきくガスの方が好きです。

ところでプロの働く厨房では、全ての調理器具がプロ用の高級なものばかりと思われているかもしれませんが、実際は全く違います。

スタッフが100円ショップで買ってきたものが厨房内には結構あります。

さすがに100円なのですぐにダメになるのですが、業者さんに発注してから入荷までが待てないので結局100円のものを買い足ししながらずっと使ったりしています。

菜箸なんかは先が折れたりしてすぐにダメになるのですが、それが分かっているので一度に何膳も買ってきてストックしているのを見ると、安物買いの銭失いというのはこう言うことを言うのだろうなとつくづく思います。

ただ、そうした100円の道具は料理の仕上がりに影響しないものに限って使っていますから念のため。

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