五感で覚える料理のコツ

誰でも最初からお料理上手なわけではありません。最初は炒め物や味噌汁などの簡単なものから始めて段々とレパートリーが増えて行くにつれ料理の腕前も上がっていきます。

例えば私の場合、最初に覚えた料理は目玉焼きでした。高校生の頃に母親に教えてもらい小腹が空いたときに自分で作って食べていました。

ところでこの「目玉焼き」という料理ですが、実は料理を覚えるにあたってとても役に立つメニューだとあれから40年近く経った今思っています。

理由は目玉焼きを自分好みの堅さに焼こうと思えば、実は五感をフル活用する必要があるからです。

まずフライパンをどのくらい熱してから卵を投入すればいいのか。次に油はどのくらいひけば良いのか。卵を割り入れたら火加減はどうすればよいのか。蓋はした方が良いのか。

これらの行程の実際の「感覚」の部分まではレシピでは表現することが出来ません。

レシピで表現出来るのは卵の個数であったり塩の分量やせいぜい火加減の指示までです。その火加減の指示さえも、実はコンロやガスの種類によって火力が違うわけですから最後は自分の感覚に頼ることになります。

ところが料理が苦手な人に限って「感覚」を無視してやたらレシピに忠実にやろうとしてしまいます。この現象を私は「料理下手の計り好き」と呼んでいるのですが、この状態から卒業しない限りはいつまで経っても料理の腕前は上がっていきません。

一つ分かりやすい例をあげましょう。

パスタを茹でるときに本やネット上のレシピにはお湯何リットルに対して塩を何グラム入れましょう等と必ず書かれていると思います。

最初は勿論レシピに書かれた通りに塩を入れてかまいません。しかし人間だんだん慣れてくるといちいち計るのも面倒になるので適当にお湯を沸かして適当に塩を入れて茹でると言った事になりがちです。しかしそれでは作る度に何だか麺のゆであがりが違うといった事になります。パスタを茹でる際に入れる塩は麺に下味をつける意味合いもあります。

じゃあやっぱり毎回計る必要があるのかとなりますが、答えは「味見する」です。最初にレシピに書かれた通りに塩を投入したら必ずお湯の「味見」をして下さい。どのくらいの塩味のお湯でパスタを茹でるのか「味」で覚えてしまうんです。こんな風に「感覚」で覚えたことは人間なかなか忘れませんし応用が利きます。味で覚えてしまえば沸かすお湯の分量がいくら増えても逆に減ってもいちいち1リットルに対して大さじ何杯といった風に計算しなくても済むわけです。

もう一つ例を挙げましょう。天ぷらの衣、皆さんは何を基準に作っていますか?天ぷら粉の袋に書かれた分量を毎回量って作っていますか?それとも何となく溶いてみたときの堅さを「見た目」で判断していますか?それとも菜箸から伝わってくる堅さでしょうか?

これの答えは「触る」です。粉を水に溶いてだいたいこの位の堅さかなと思ったら手を衣に直接差し入れて指先で衣の堅さや温度を感じて下さい。衣の海に指先を泳がせる感覚です。

この感覚を覚えてしまえば、先のパスタと同じでどんな量の衣を作る時でも応用がききますので失敗がなくなります。パスタの場合は「味覚」、天ぷらの衣の場合は「触覚」でそれぞれ適切な分量を覚えたことになります。

こうした覚え方を全ての料理に対して行っていく事が「料理下手の計り好き」から卒業する一番のコツであり近道になります。