介護というのはいつでもどんな場合でも、結局の所は個人対応になりますし体の状況は人によって全て違います。
私が関わる「介護食」に関しても考え方は同じです。
Aさんは普通の食事で問題なくてもBさんは一口サイズに切ってあげないと食べられないとか様々ありますし、アレルギーや好き嫌いなど含めるともう本当にバラバラです。
ただ、そんな中でも多くの方に当てはまる事がいくつかありまして、「介護食」という括りで講習などをさせていただく場合には、そうした最大公約数的な条件を最初にお話しします。
「条件」というのはつまり、若い人には問題なくても多くのお年寄りにとっては苦手な事といった意味になります。
大多数のお年寄りが苦手な食べ物は大きく分けて三つありまして、まず「硬い物」、それから「乾いた物」、そうして最後に「喉に詰めやすい物」となります。
この三つのうちどれか一つでも含まれていればそれはお年寄り向けの料理には向かないという事になります。
逆に、この三つさえ意識して排除すれば、どんなお料理であってもお年寄りにとって普通に食べる事の出来る料理という事が出来ます。
在宅で介護している場合、自分が食べる料理と別に介護食を用意する事はとても面倒ですし、出来れば同じ物を食べて欲しいと思うのが人情です。
そんな時に、こうした三つの条件を頭に入れておけば普段の献立作りに役立てて頂けます。
例えばスーパーでアジが安かったとします。普段なら塩焼きにする所を、お年寄りも一緒に食べるのなら煮付けの方が食べやすい事に気づきます。
でも、やっぱり塩焼きが食べたいと思ったのなら、水分を補う大根おろしを付けてあげて下さい。たったそれだけでアジの塩焼きが「介護食」に変身します。
カボチャが好きだから煮物にしようと考えた時に、カボチャや芋類などは喉に詰めやすい食品に当てはまります。
それでもカボチャもイモも好物だから食べたいと思ったなら、煮物ではなくマヨネーズやオリーブオイルを使ったサラダにして下さい。小さめに切ってマヨネーズを付けるだけでもかまいません。
油を使うと喉越しが良くなり、お年寄りにはグンと食べやすくなります。
こんな風に、ほんの少しの知識を頭に入れるだけで特別に介護食を用意する手間から解放されます。
そしてご家庭ではトロミ調整剤はなるべく使わずに済むように考えてみて下さい。
そうする事で結果的に食欲も維持されて体力も維持されると思います。
誤嚥を怖れる余り何でもかんでもトロミ調整剤を使ってしまうと、量が食べられなくなり結果的に体力を落とす遠因になります。
ご家庭で介護する場合は、こうしたユニバーサルレシピの考え方を念頭に毎日の献立作りに生かして頂けたらと思います。