誤嚥性肺炎が死亡の原因として肺炎と分けてカウントされる様になったのはいつからでしょうか。そんなに昔ではない気がします。
この二つが分けてカウントされる様になった経緯を私は知らないのですが、調理師としてお年寄りの食事を作る立場から言わせていただくと、「誤嚥性肺炎をことさら特殊で危ない病気の様に煽るのはやめていただきたい」となります。
理由を説明します。
「誤嚥性肺炎」でお年寄りが亡くなる事実を見聞きした人の多くは、恐らく自分が介護する立場になった時に誤嚥を起こさない食べ物を提供しようと注意すると思います。
真面目な人であれば尚更です。
その結果、飲み込む時に喉に詰まらないようにおかずは小さくカットして出す事になり、気管に入らないように液体にはトロミを付けて飲ませるでしょう。
それをアシストする様に、昔は無かったトロミ調整食品が今では普通のスーパーでも売られています。
一方、実際に誤嚥をして肺炎を起こす方は、批判を覚悟で言うとほぼ寿命が尽きかけた人達です。首尾良く誤嚥を起こさずに過ごせたとしても、もう一年単位で生きていられるかどうか怪しい人達とも言えます。
だったら、美味しくないトロミ調整剤を使って何でもかんでもトロミ食にせずに、また何でもかんでも小さく刻まずに、今まで通り普通に食べさせてあげて下さいと言うのが調理師であり介護食士でもある私の気持ちです。
勿論、施設でこれをすることは難しいでしょう。利用者の家族によっては訴訟問題になりかねませんから。
しかし、ご家庭で身内を介護しているなら出来ると思います。その為にはコミュニケーションがしっかり取れることが前提ですが、一日中自宅から出ることが出来ず、ほとんどをベッドで過ごすお年寄りの一番の楽しみは食事のはずです。
その食事が、一体何がお皿に載っているのかさえ分からない「刻みトロミ食」で出てきたらがっかりして食欲も無くなるのではないでしょうか。
これは私が実際に父を介護していた時の話しですが、父は歯が悪く普段はお粥を炊いて食べさせていました。しかし好物のウナギを買ってきた時だけは普通のご飯で文句も言わずに食べていました。
歯が悪くて噛めないはずなのに好きなウナギの時だけは何故か歯が丈夫になるようでした。(笑)
人間ってそんなもんなのだと思います。
つまり誤嚥性肺炎とは老化現象の一つの表れであって、決して不注意で起こる病気ではないという事です。
であれば、その人の残された少ない時間、日々の食事を少しでも楽しめるものにしてあげたいと思うのです。