私は以前、大変高級なサービス付き高齢者住宅で働いていた事があります。
サ高住なので入居する際に高額な入居金などはありませんでしたが、月々の費用が最低35万円くらいからの設定になっていまして、普通に食事をしてサービスを利用すると概ね50万円ほどは必要なサ高住でした。
この金額を毎月払い続ける事が出来る人は例外なくお金に余裕のある方々になりますし、中には桁違いのお金持ちもいらっしゃいました。
ですから施設も当然ピカピカでまるでホテルのような雰囲気ですし、ビルの10階にあったレストランフロアは1つの壁が全面ガラス張りになっていて夜になると素晴らしい夜景が楽しめる場所でした。
そんな場所で私は金持ち老人達の最晩年を見させていただいたのですが、つくづく思った事はお金の多寡と幸せの量は比例しないなぁという事でした。
例えばこんな方がいらっしゃいました。仮にAさんとしておきますが、この方はお金持ち入居者さん達の中でも更に抜きん出てお金持ちといった方で、女性なのですが若い頃はさぞかし美しかったであろう美貌を維持されていて、性格も社交的で周りの方達ともそれなりに仲良くされていました。最初私はこの方について、お金も美貌も全て持ち合わせ、お子様もいらっしゃったので家族にも恵まれ、幸せな老後だなと思っていました。
所がです。
実はこの方ご主人を亡くした後、その莫大な遺産を巡って子供達の醜い部分を見てしまい鬱状態になって逃げるようにその施設に入居してこられた様でした。
こんな方もいらっしゃいました。80代の男性です。
この方は入居から時間が経っても誰とも関わろうとせず、他の入居者の方が仲良くなろうと声をかけても相手にしようとしません。食事もいつもカウンター席で一人で食べていらっしゃいました。
しかしただ大人しくしているのかと言えばそうではなく、時には食事に文句を付けてみたり、介護士さんの態度に文句を付けてみたり、施設の空調に不満を言ってみたりと、要するに相当なクレーマーでした。
それである時、何かの話しのきっかけで介護士さん達とその方の悪口になりかけたのですが、一人の介護士さんがぽつりと言ったんです。
「でもあの人、時々夜中に一人で泣いてるんやで。寂しいって…。」
つまりこの方のクレームは寂しさの裏返しだったんですね。
いくらお金があっても結局人はそれで心が満たされるわけではありません。
そうした寂しさを癒やしてくれる誰かがもし今のあなたにいるのであれば、そのありがたさを人はしっかりと噛みしめて感謝をし、生きていかなければならないと思います。