忙しい現代に無くてはならない調理器具が「電子レンジ」です。
例えばティッシュペーパーが無い家庭が想像できないのと同じ様に、今では電子レンジがない家庭は限りなくゼロに近いのではないでしょうか。
昔、私の祖母が「ティッシュペーパーが無かった頃は一体どうやって生活していたのか思い出せないわ。」と言っていたのを今でも覚えているのですが、電子レンジが世の中に普及して、家庭料理は大きく変わりました。
中でも一番変わったのは、冷やご飯を食べなくなったことではないでしょうか。
今ではコンビニのお弁当でもレンジで温めて食べる世の中ですが、レンジが無かった頃に冷やご飯を温めようと思えば「蒸す」以外に方法がありませんでした。
しかしいちいちそんなことをするのも面倒ですから、普通はそのまま冷やご飯で食べるのがスタンダードだったと思います。
まあ、そのくらい便利で役に立つ電子レンジなのですが、実は介護食とはあまり相性が良いとは言えません。
特に蒸し物を作る場合に、電子レンジで簡単に作る事はおすすめしません。
これは電子レンジが素材の水分を奪うのと熱の通りにムラが出来るからで、なるべくしっとりと仕上げたい介護食を意識した献立には不向きといっていいと思います。
例えば魚の蒸し物を作る場合でも、電子レンジを使えば結構簡単に作れたりします。ですが、どうしても火の通り方にムラが出来てしまうのも電子レンジです。
万遍なく上手に加熱するには慣れも必要になってきますし、失敗すると火が入りすぎて硬くなったりします。
また、一般にお年寄りは食中毒についても若い人より神経質になる必要があり、普通に蒸して作った蒸し物なら万遍なく熱が入り、食中毒を起こす心配はかなり少なくなります。
一般的に食中毒の原因菌を殺すためには、75℃以上で最低1分以上の加熱が望ましいわけですが、電子レンジの様に熱の入り方にムラが出来てしまうと、場所によってはそこまで温度が上がりきっていない事もありえますし、時間も短時間で仕上がってしまう電子レンジは、加熱時間の面でもおすすめできません。
ただ、電子レンジの加熱は短時間であっても逆に殺菌効果があるとする研究もある様ですので加熱時間と滅菌に関しては良く分からない面もあると言えます。
そんなわけで、色々総合的に考えるとやはり電子レンジと介護食は相性が悪いと言って差し支えないのではないでしょうか。
煮物やご飯など、一度しっかり加熱されていて滅菌されているお料理を再加熱する場合はそんなに神経質になる必要はないかと思いますが、生の食材を加熱調理する際にはちょっと頭に入れて置いてもいいのかなと思います。