私が働いていたサービス付き高齢者住宅には入居者さんが70名ほどいらっしゃいました。
規模としては大きな規模ではありませんが、これだけ集まりますと当然様々な人間模様を目の当たりにすることになります。
今日はその施設で私がとても印象に残っている人の事をお話しします。
一人は御年90歳を超えるAさん。この方は認知症を患っておられたのですが、普段私が厨房から拝見していても、また介護福祉士の方にお聞きしてもあまり手の掛からないとても可愛いおばあちゃんでした。認知症の加減で目の前の食事に中々手を付けようとしないことがあるのですが、そんなときは介護福祉士の方がさりげなく側に行って介助をしたり何かと周りから大事にされているおばあちゃんでした。
もうお一人というかご夫婦で入居されていたKさんご夫妻という方がおられました。
非常に気の強いご夫婦だったようで、何か気に入らないことがあると、とことん介護福祉士の方を追いつめるような事をされていた様です。私は厨房のスタッフですので、食事関連の苦情しか耳に入ってきませんでしたが、あるときお粥の堅さが気に入らなかったらしく、居室に配膳したスタッフの方の手の甲に熱いお粥をぶちまけた事があったと聞きました。
まあ、そんなこんなで色々不満に思われていたこのKさんご夫妻はしばらくして退去されました。皆ほっとしたものですが、それから1年程も経っていたでしょうか。
そのKさんご夫妻から再入居したいとの連絡があったそうです。
しかし入居されていたときの印象があまりにも悪かったので、入居を断ったとの事でした。
聞けば、他の施設で退去を促されたあげくに行くところが無くなってもう一度入居を申し込んできたようでした。ちなみにこのご夫婦、大変なお金持ちでした。
一方では認知症で介護に手が掛かるのに、皆から愛されている可愛いおばあちゃん。
一方では結局何処にも行くところが無くなってしまったご夫婦。
とても対照的ではありますが、介護する側も人間です。
意地悪な人の介護など誰もしたくありません。
自分もいずれ年を重ねて施設に入ることがあるかもしれません。
肝に銘じておきたいなと思う今日この頃です。